リハビリで生活を取り戻す

 日泰寺で有名な覚王山の駅からすぐのビルに「眠りの学校」という名を冠したサロンがある。眠りについて普段あまり意識することがないかもしれないが、寝ているはずなのに疲れが取れなかったり、必要以上に早く目覚めてしまい不安になったり、夜間に何度もトイレに起きたり…歳を重ねると共に眠りに関する心配事が増えていく。身に覚えのある人も多いのではないだろうか。悩みは人それぞれで違うかもしれないが、ここでは良質な睡眠に必要なことを多面的に学ぶことができ、眠れる身体づくりをサポートしてくれるという。介護に関連する仕事である理学療法士のお話を聞きたいと思っていたところ、縁あって「眠りの学校」で「身体づくり」の面からのケアを担当している中島さんに、理学療法士という仕事や身体との向き合い方などについて伺ってきました。

 理学療法士はPT(Physical Therapistの略)とも呼ばれ、介護の現場で必要とされる職業の1つ。「介護施設や整形外科でリハビリをする人」というざっくりしたイメージしかなく、同じようにリハビリを担当している作業療法士のOT(Occupational Therapistの略)との違いもよく分かっていない私に「リハビリテーションには『身体を再び元の状態にする』という意味があって、大きく分類すると『立つ・歩く・座る』といった基本動作に関係する部分のリハビリは理学療法士が、日常生活で必要となる細かな手先の作業などの面は作業療法士が担っています。」というところから説明をしてくれる。事故や病気による骨や筋肉、脳、内臓など身体機能に障害や不自由のある状態から再び元の生活を取り戻すためにリハビリが必要で、それを支えているのがPTをはじめとするリハビリのプロ達なのだ。


身体を上手に動かす

 そんな理学療法士という職業を目指したのは「高校でサッカーをしていた時にけがをしてしまって接骨院に通っていたのですが、その時に身体について知ることが楽しくなり、柔道整復師の先生に教えてもらったことで理学療法士に興味を持ちました。」とのこと。もともとスポーツが好きで身体や筋力トレーニングに興味を持つところから始まり、勉強して知識が増えてくるとさらに知りたくなる。中島さんはそうして技術や経験を積み重ね、活躍の場を広げてきた。

 

 知識がついてくると「いかに自己流で身体を使っているか」が分かってくるのだそう。自己流で身体を動かし続けると、痛みが出たり動きが悪くなったりという症状につながったりもする。 「立ち方とか歩き方って誰かから教えてもらった訳じゃなく、自己流ですよね。たとえば、身体のことを知って効率の良い立ち方とか歩き方をすれば、腰痛やひざ痛は限りなく防げるんです。」そう言われると、自己流でない身体の使い方を知りたくなる。

 

 


 このような身体の知識は応用の幅が広く、早く走れるようにアドバイスをしたり、趣味で続けているマラソンに活かしたりもしているそう。スポーツで最高のパフォーマンスをするためにも、身体を上手に動かす方法を知り効率的にトレーニングを行うことが大切になってくる。スポーツ選手を支えている理学療法士が多いというのも頷ける。理学療法士の資格を得てから、初めは整形外科でスポーツ選手に対するリハビリなどを中心に行っていたそうだが、一方で専門学校での後進指導に携わり今では10年が経つという。専門学校で教えることになった経緯を尋ねると「理学療法士という仕事の内容や身体の正しい知識をもっと若者たちに伝えたい。という想い」や「スポーツ理学療法をちゃんと広めないと、という使命感」が経験を重ねるにつれて強くなったのだと教えてくれた。中島さんからそんな想いを受け取った卒業生の多くが今では介護に携わり、デイや訪問サービスなどで高齢者の手助けをしている。

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「求めていることを聴き、適したものを伝える」これは、たくさんの患者さんと向き合い、身体と向き合う中で中島さんが最も心掛けていることであり、教え子にも伝え続けている大切なことだ。

相手が心配していることに耳を傾け、どんな姿を理想としているのかを一緒に描き、その人に合う方法を提案しケアをしていく。

今感じている痛みだけでなく、原因を探って根本治療を目指す。「ここをほぐすと動きが変わりますか?」などと声をかけながら、筋力はあるのか、しっかり使えてるかなど身体の状況や反応・感触を丁寧に確認し、弱点を見つけ補う方法を考える。 「筋力はあるけど緩める力がない」というようにバランスが取れてないケースもあるそうで、身体をバランスよく使うことが重要なのだという。

身体の使い方を知り程よく動かすことで、代謝が上がり、筋力や体力がつき、睡眠の質が向上する。健やかに過ごすために自分に合った身体の使い方を知っておいて損はない。将来も見据えて、まずは自分の身体に興味を持ち、少しでも気にしてほしいとの想いで説明にも熱が入る。最後に、中島さんが考える理学療法士の醍醐味を聞いてみると、理論や根拠に基づいたリハビリやケアを通して本質的なところに直接アプローチできること、医者や他の専門スキルを持つメンバーとチームになって治療やケアを行うことができることを挙げてくれた。

 

「身体を知ることを通して栄養のことにも興味を持つようになり、今でも学びが尽きない」と話す姿に、楽しみながら身体と向き合うことの大切さがわかった気がした。

(インタビューは2021年7月10日に実施しました)

取材協力:覚王山サロン・眠りの学校 KAKUOUZAN SALON


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