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刈谷市北部にある通所介護施設「えんがわ」では、毎日11時ごろ、レクリエーションの盛り上がりが最高潮に達するという。
この日は2チームに分かれてのお手玉入れ合戦。
輪の中心でゲームをリードするのは若手職員の2人。
その日の利用者さんの状態を見ながらチーム分けや席順をテキパキ整えていく。準備ができたら、いざゲーム開始。
運動会でお馴染みのクシコスポストをBGMに、車イスの人も認知症の人も、歩ける人も麻痺がある人も、一緒になってゲームに挑む。
箱に入ったお手玉の数を皆で数えて攻守交替。
より多くのお手玉を箱に入れることができた「入れ方上手チーム」と、お手玉が入りやすいように箱を動かした「やさしいチーム」とを、最後に全員で称えあう。
白熱のレクリエーションが終わったと思ったら、あっという間にランチの時間。
食後の休憩中に、利用者さんに話を伺う。
「ここの好きなところ聞かせてください」
良いところを挙げればキリがないけれど…と言いつつ『毎回飽きないところ』『従業員が素晴らしいこと』それに『誕生日会』。
「ほんとうに良いところでねぇ。誰にでも自信を持ってオススメできるのよ」と説明に熱が入る。職員の想いが伝わるレク、互いに思いやる雰囲気の良さと利用者さんとの一体感、そして美味しい手作りケーキが振舞われるという誕生日会。
自分の誕生日会だけでなく、誰かのお祝いをするのも楽しみなのだという。
別のご利用者さんも「誕生日会良いよね。ここは最高だよ。ここに来る前に、いくつか他の施設にも行ったけど、せわしい感じで僕は落ち着かなかったなぁ。」日中だけでなく、ここ数年はお泊りデイ(2Fに寝泊りできるサービス)も利用しているそうで「夜も寂しくないし、何よりのんびり過ごせるから。それが最高だよね」と笑顔で語ってくれた。
「ここの好きなところ聞かせてください」
良いところを挙げればキリがないけれど…と言いつつ『毎回飽きないところ』『従業員が素晴らしいこと』それに『誕生日会』。
「ほんとうに良いところでねぇ。誰にでも自信を持ってオススメできるのよ」と説明に熱が入る。
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工務店を辞め、実家を改装して施設を作ったという代表の森さん。介護の世界に引き込んだ取締役社長の石井さんと奥様。ブリジストン方式で名付けられたforeSTone(フォレストン)株式会社が運営する「えんがわデイ」では地域密着型デイサービスに加えて、お泊りデイや訪問介護等のサービスを提供している。「介護の仕事を覚えたてのころは目の前の仕事に追われてて全然利用者さんと向き合えなかったし、最初は多分そういうもんだとも思ってたんだよね。でも仕事に慣れて周りが見えるようになってくると、そういうの違うんじゃないかって、ね。」
「私もね、結構悪質というか、人を人として扱わないような施設を経験してて…せめてそういう施設から1人でも多く守りたいという想いが強いかもしれない。」
それぞれの過去の苦い経験さえも、今では利用者さんとの関わりを第一に考える施設づくりへと繋がっている。本当に求められていることを見極め、どうしたら期待に応えられるのかと考え、職員が生き生きと働ける環境を整えて少しずつサービスに反映させてきた。
例えば食事介助の体制、職員1人が 4~5人のケアを する状況は珍しくないがここでは2人まで。
職員が焦らず余裕をもって対応することで利用者さんに安心感が生まれ、満足度も高くなる。
分かっちゃいるけど…で終わらせず、地に足のついた取り組みが行われている。
「大規模な施設は、介護士1人あたりで担当する人数がどうしても多くなってしまうからね。本当は10人くらいにしたいけど、今は少し増えてて気持ち多めかな。ここで働いてる子たちはこれが普通と思ってるかもしれないけど、できれば大手も一度経験してほしいと思ってる。たくさんの人に接する機会だったり、効率化の面での学びも多いと思うから。」
職員の成長を願いつつ、利用者さんが安心して過ごせる空間づくりを目指す。
このような運営を可能にしているのは1日の受入れが12人程度という小規模施設ならではかもしれないが、利用者さんと職員の程よい距離感は、初めて訪れた私にも心地よい。
「アットホームってこういうことなんだろうなぁ」ふと口をつくと「ふふっ、そう言ってもらえると嬉しいけど、実際に家族が利用しているっていうのもあるかもしれないわね。あのお婆ちゃんは代表の本当のお祖母ちゃんだし、あの子(職員)のお祖母ちゃんもいるし、娘も働いてるし。」家族のような雰囲気なのではなく、実際に家族と過ごしているのだった。
「あ~早く池できないかな」と突然つぶやく石井さん。
聞けば、以前手作りした池を改修する形で、池の整備を進めているという。不思議と魚たちへのエサやり時間は憶えていて、それが日課になっている人、メダカを眺めるのが好きな人、それぞれに池の出来上がりを心待ちにしている。
池の他にも、庭に植わっているヤマモモの実を収穫してジャムにしたり、花火大会を見たり、芝生に寝転んだり…
「庭に出てみんなで寝転ぶと、普段は車イスの人もそうでない人も同じというか、障がいとか関係なくなるじゃない?」
この庭で過ごす時間は特別であり「えんがわ」にとって、なくてはならない癒しの場所になっている。
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最後に職員を代表して、管理者の多田さんと木下さんにも話を伺う。
-利用者の皆さん、誕生日会をとても楽しみにしているようですが、どんな工夫をされてるんですか?-
木「毎年ちょっとした贈り物を用意してて、たとえば生まれた時の新聞だったり、手作りのスノードームだったりするんですけど。今年は何しようって企画や準備は大変ですが喜んでいただけてるなら嬉しいですね。」
-介護に携わることになったキッカケを教えてください-
多「僕の場合パソコンが好きで、パソコンを使った仕事を探してた時に老健(介護老人保健施設)の介護事務の仕事を見つけて。初めは事務仕事だけでしたが現場の近くにいるうちに魅力を感じたというか。笑顔に元気を貰ったり、人生の先輩方から様々なことを教わる楽しさもあって、何だかんだで今に至ります。」
木「私は、もともと祖母がこちらを利用してて、家族として面会に来るうちに楽しそうだなって。それまでは飲食店で働いてたので介護は初めてでしたが、人に喜んでもらえるというやりがいに共通点を感じてます。利用者さんに笑顔になっていただきたいと思っていますが、些細なことでも“ありがとう”と感謝の言葉をたくさんもらい、実は私たちが笑顔をいただいています。」
多「そうそう」
木「あ~幸せだなぁって感じてもらうのが理想かなと思っています」
-利用者さんの中に職員の家族がいるって素敵ですね-
多「“身内を入れたい施設”というのは、コンセプトの1つでもあるんです。自分の家族だったらどうするか考えるようにもなって、よりご利用者さんの声に耳を傾けるようになる面もありますし、家族は入れたくないって嫌じゃないですか。」
木「実は、祖母にも出席してもらいたくて、明日ここで結婚式をするんです。日曜日だからお泊りデイの利用者さんだけですが、一緒に楽しめたらなと思ってます」
多「本当のお祖母ちゃんと同じくらいみんなが俺の孫みたいに思ってるよね(笑)」
-お泊りデイについて教えてください-
多「ショートステイ(短期入所生活介護)もありますが、慣れた職員や環境を希望される方は多いです。お泊りデイは介護保険ではカバーできないので実費となりますがご利用者さんの声に応える形でサービスが始まりました。2階に5部屋かな、居室があって住まわれています。介護保険も使えるよう、しっかりと制度化されていくと良いなと思っています。」
利用者さんにも職員にも愛される施設、訪れて幸せな気持ちになりました。
(取材は 5月22日に実施しました)
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